富士山は動いている
富士山は動いている。
今日、この私が確信したことだ。
昼間、私はいつも通りに街を歩いていた。
「今日は空気が澄んでるから富士山も綺麗に見えそうだね」私はそう思った。
目線を上にあげた時、そこにあったのは山の影もない青空だった。
あれ?
本来なら白と深緑のツートンカラーが見えるはずなのに。
そこには何もない。
あるはずのものが無い。
私は焦った。富士山が消えたなんて、あるはずがない。
脳裏に過ったのは。
「富士山は動いている」
富士山は、本来あるべき姿を今も捜し求め、時々消えるという。
その時、また代わりの富士山が地下から生えてくるのだが、生えてくるまでにタイムラグがある。
その間に、「富士山がいない」という現象が起きる。
しかし、日本人は不思議なことにそれを目撃『できない』体質になっている。
無意識に、富士山のある方角から目を逸らす時があるという。
それは、全国どこにいても関係ない。不定期に、日本人全員が、『ある方角』からいっせいに目を逸らす時間帯がある。
私は、偶然にも『目を逸らさなかった』。
富士山がそこに出てきたら、そいつは偽物だ。
本物はどこへ?
私は、それを探そうと思う。